浮世絵

浮世絵 心の原風景

 NHKの「美の壺」を見られておられる方も多いと思う。最近「空間の魔術師 ロイド・ライト」の番組を見た。ご存知の通り帝国ホテルの設計者である。建築はともかくその番組でライトが浮世絵の収集家と知った。日本での設計料のほとんどを浮世絵の収集に使い、その数4千枚に近いという。

 19世紀、浮世絵が外国に与えた衝撃は計り知れない。

ゴッホ、モネなどに与えた影響はその作品に現れている。ゴッホの「ダンキー爺さん」の肖像画の背景に浮世絵の額がある。また、「花魁」という絵もある。ゴッホの絵にはその技法に、またその造形に、色彩に、浮世絵の影響が色濃いと言われる。

 モネの「睡蓮」の絵は日本人になじみやすい。彼がパリ近郊ジヴェルニー村に作った睡蓮の池には広重の浮世絵「亀戸天神境内」にある太鼓橋をイメージした橋が作られている。両者を比べればモネがいかに浮世絵に傾倒していたかがわかる。

 あまり浮世絵は詳しくないが、私が一番好きな浮世絵は葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」である。歌麿美人画写楽の役者画もいいが、風景画の方が馴染みやすい。やはり葛飾北斎の「富嶽三十六景」に吸い込まれる。二、三好きな絵を挙げると、たる職人の作る大きな樽の中に富士山が描かれている「尾州不二見原」。大きな角材を木挽きしている「遠江山中」。昭和30年代まで西横堀川の川岸で銘木を木挽していた姿を思い出す。そして両国橋の木場の「本所立川」である。どうしても木材に関連に目がいく。

 「北斎漫画」が面白い。いろんな職人や芸人そして市井の庶民の姿 動物 妖怪をユーモラスに描いている。どの絵を見ても何か心に響くものがある。この北斎漫画が古新聞のように、日本から輸出される陶器や磁器の緩衝材として使われた。それを見たモネやゴッホ等のフランス印象派に大きな衝撃を与えた。

 北斎は89歳までに30回改号し90回転居したと言われる。家には食器もなく極貧の人生であった。その中で浮世絵や北斎漫画など生涯に3万点もの作品を残した原動力はなんだったのだろうか。15年ほど前、旅行で立ち寄った小布施の岩松院で、畳二十一枚分の大きさに描かれた極彩色の「八方睨み鳳凰図」を見たときの感動は計り知れないものがあった。北斎87歳の時の作品である。

 89歳で亡くなる時の辞世の句「人魂でいく気散じや 夏野原」浮世絵