デジタル・ポピュリズム

この二、三年、大方の予想に反した投票結果となったのはアメリカの大統領選挙、イギリスのEU離脱である。両者は共に僅差であった。そこにロシアの介入があったと報じられている。

 今のフェイスブックツイッターを利用した世論操作のテクノロジーは我々の想像を超えている。その実態を集英社新書「デジタル・ポピュリズム」—操作される世論と民主主義—福田直子著を読んで知り愕然とした。福田直子氏は長年ドイツに在住のジャーナリストである。

「グーグル」「フェイスブック」「ツイッター」「アマゾン」は スーパーコンピューターを駆使して個人情報を蓄積している。そこで個人の「思想」「資産状況」「行動パターン」を把握し、購買意欲を煽ったり、選挙で特定の政党へ投票を誘導することもできる。

 欧米の若者はフェイスブックでニュースを見ている。そこへ特定のグループ向けのニュースを作って流し、マインドコントロールした結果がアメリカの大統領選挙とイギリスのEU離脱になった。この操作をしたのはロシアのプーチンに近い情報操作会社であると言われている。ロシアは冷戦に負けてから、アメリカ・欧州の一極集中の世界秩序を崩そうと画策している。

 大手の新聞社は必ず記事を検証しているが 「フェイスブック」や「ツイッター」のニュースや書き込みには、裏付けがない。フェイクニュース(嘘)がまかり通る。その恐ろしさはミャンマーの少数イスラム教徒「ロヒンギャ」への民族浄化とも言える排斥と虐待に繋がった。

 長年、軍事政権の圧政に苦しんだミャンマーで2015年に総選挙が行われ、やっと民主主義が到来したと言われたが、その後ロヒンギャ民族浄化が始まった。その原因を福田直子氏は、『フェイスブックがミュンマーの国営通信会社と組んで「無料」でネットを使えると宣伝し、自社の運営する閲覧サイトに国民を誘導した。その無料サイトの「検証されていない書き込み」に「ロヒンギャのギャングか東インドで子供を誘拐している」との流言飛語を流し、その報復でロヒンギャへの虐待が始まった。もしミュンマーがフェイスブックを受け入れなければこの事態は起こらなかった』と分析されている。

 ネットで情報を得、アマゾンで買い物ができ、便利な社会になったと思ったが、基本的な人権をも侵害される社会になるのか。