天使の分け前

サントリーウヰスキー「山崎」が品薄であるといわれて久しい。高校時代の同窓会で、友人がイギリス駐在の息子から「サントリーの『山崎』を出来るだけ集めて送ってくれ。得意先への贈答に使う」とメールが届き、方々に手配していた。ネットでは最高2万円の高値ものもあり驚いたと言っていた。ウヰスキーの本場のイギリスで日本のウヰスキーブームは続いているようだ。

 私はスコットランドシングルモルトのスコッチが好きだ。特に潮のかおりのする「タリスカー」がスコットランドのイメージとあう。少し高いが一年に1本ぐらい何か嬉しいことがあったときに買う。私はシングルモルトは単純でキレがいいいと思っていたが、本場のイギリスでは日本のブレンドウイスキーの良さが評価されだした。世界の品評会でも絶えず最優秀賞を確保している。

 びっくりしたのは、昨年香港のオークションで小売価額100万円の「山崎50年」が3300万円で落札されたという。また南さつま市本坊酒造ウヰスキーマルスモルテージ 3プラス25 28年」が13年に世界最高賞に輝いている。

 日本ウヰスキー人気の秘密はブレンド技術にあるようだ。オークやチェリーなどの木製樽で熟成された原酒を、日本に9人しかいない優れたブレンダーがブレンドすることによって独特の味を出す。これもジャパンクールの一つであろう。日本人の太古の昔から磨き抜かれた嗅覚と味覚が相まっての成果が、世界のウヰスキー愛好家に認められたのは喜ばしいが、我々庶民のウヰスキー愛好家には「山崎」が高嶺の花になり悩ましい。

 ウイスキーを木製樽の中で原酒を熟成させると量が減る。この減った分を「天使の分け前」と呼ぶ。木の味わいと香りを染み込ませる代わりに天使に分け前を払う。これを惜しんでは良い酒はできないといわれる。何か人生に通じる含蓄のある言葉である。

 人間も企業も熟成するには年月がかかる。しかし私のように82歳になっても熟成もせず、体力だけが年相応に衰えていくのも悲しい限りである。